愛より速く/斎藤綾子(JICC出版局) |
菊池信義氏デザイン | 全然ダメ・バージョン | 思想の科学版 |
斎藤綾子は最初、「僕らの性的冒険」という投稿募集に応募してきた。どえらい面白い。文章の切れ味がいい。さっそく連載にした。しかもあってみたらかわいい。こんな子がこんなエッチなことを、とドキドキした。連載がたまるとそのまま単行本に。 彼女はいまや多くの著作と熱心なファンを持つ作家だが、その作品群の中でもこの処女作は今でもナンバーワンクラスの作品だと思う。 この本は当時としては内容が超強烈だが、かえって僕は文学っぽいパッケージにしようと思った。そのほうが彼女が書き手として売り出せると思ったからだ。 また、原稿のボリュームもやや少な目だったので、文字数が少なくても成立するような本文組も必要だった。 当時、JICCで出していた本の装丁でシックでいい質感のがあったので、この人に装丁を頼みたい、と言って紹介してもらったのが、菊池信義さんだった。菊池さんは装丁ではたぶん現在、日本の第一人者である。当時もすでに超売れっ子だったけど、僕は知らなかった。 タイトルもあえて「愛より速く」と抽象的なのをつけた。もっとエッチなタイトルにしたほうが売れるのに、と当時言われた。最近はときどきこのタイトルを絶賛してくれる人がいる。 カルトな漫画家安部慎一をフィーチャーしたこの本のカバーは、菊池さんの傑作だと思うが、まもなく、何かのシリーズに入れるという理由で、カバーが変わってしまう。これは悲惨であった。その後、この本は「思想の科学」ででて、現在は新潮文庫で読むことができる。初版が1981年とあるから、すでに20年この本は生き続けている。 |
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