受験ホイホイ/佐藤克之(JICC出版局)

受験ホイホイ カバー表 受験ホイホイ カバー裏

佐藤克之も「僕らの性的冒険」に応募してきたんだけど、少し毛色が違う。全然エッチではなくて、高校生がキスをしたのを自慢する様子を書いたもの。投稿を採用した頃から克之はよく編集部に遊びにくるようになって、大学ノートにメモしてきたネタを「どうすかね」と披露した。なにせ高校生のネタであるから、9割はつまらないんだけど、ときどきほのかに面白いやつがある。「昨日電車乗っていたら、へんな名前のラブホテルがあったんすよ」。「ああ、じゃ、それ書いて」と言って情報欄だったVOWのコーナーにほうりこんだ。そんなのがVOWがナンセンス化していくはしりだった。くだらなさの中にときどき宝石があるのさ。
「受験ホイホイ」は、克之の高校生文集。中で強調したい文字をでかくするというような実験をいろいろやった。このアイデアは、ホイチョイの大ベストセラー「見栄講座」に影響を与えたふしがある。そのぶん、デザイナーの割付作業がたいへんだったのだけれど、このときのデザイナーがいまやコラムニストとして有名な山崎浩一。この人は器用な人で文章も書けば、絵も書くし、デザインもする。克之の結婚式で、「俺をあごで使った編集者はあんたしかいない」とホメられて(笑)、少しうれしかった。
この表紙のアイデアは僕。克之受験生に教育ママが栄養をつけようと夜食を持ってきた場面。これが裏表紙では、ぐちゃぐちゃになってしまう。ストーンズの「レットイットブリード」のジャケットからアイデアを盗んだといってもわかる人は少ないだろう。ママの役を別冊宝島編集長で他にも数々の大ヒットを持つ石井慎二氏に女装してもらったというのも僕自身としては得点が高い。それから参考書の「奇跡の英単語」といっしょにウスペンスキーの「奇跡を求めて」が積んであるというのも、とても気に入っているのだけれども、こんなマイナーなシャレに感応してくれた人はまだ一人もいない。こんなところでへんな満足をしてしまうところが僕の大衆性のなさである。

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