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村松様、こんにちは。このような、今の時代になくてはならない掲示板を作ってくださったこと、心よりお礼申し上げます。
某出版社で、文芸書の編集の仕事をしています。以前は勤めていたのですが、バレエを踊っているため、舞台および稽古との両立をはかるべくフリーとなり、本一冊ごとの契約で働いています。
昔なら、こんな働き方はできなかったと思います。ライターならともかく編集者は原稿のやりとりがあるため会社のデスクに常駐することが必須。今はネットがあるので、家にいながら、印刷所とも著者ともデザイナーとも、テキストデータおよびPDF、JPGのやりとりで本に仕上げていくことができます。
ネットばんざい と思っていましたが、さすがにここ1、2年で危機感を感じるようになってきました。
出版社まわりの人ならともかく、会社を一歩出ると、本を読んでいる人がいない。「春樹の●●読んだ?」「ああ、あれねー」みたいな会話を、もう数年、出版社外の方と、したことがないです。本、読む? とおそるおそる聞くと、「小学校のとき『宝島』とか読んだ」とか。『宝島』が読めるなら、そうとう、読書好きな子、あるいはそういうふうに育つ素養があった人のはずです。
バレリーナは体育会系だからそうなのでしょうか。私以外の人はどうなのでしょうか。小説家志望とか、そういう人以外で、いわゆる「読書家」にあったことは皆さん、ありますか。聞きたいです。私たちがお客様としているのは、もちろん、そういう方々であったはずだからです。
バレエの公演は、バレエを踊る人しか見に行きません。少なくとも日本ではそうです。
このままだと、本も、本を作る人しか読まない特異文化ジャンルになってしまうのではないかと思っています。
原因は多々あります。もう古い著作になってしまったけれど、『誰が本を殺すのか』に、詳しく分析されています。基本的に、あそこに書かれた延長線上に、本離れの理由はあると思います。
ただ、あの頃より、ネットが肥大し、活字離れに拍車がかかっています。
そういう私自身、本屋で本を買わなくなりました。編集者が本を買わなくなったら、これは「やばい」です。
街に、昔なら駅前には一軒はあった、味のある、がんこ親父さんがやっているような書店がありません。チェーン書店はどこも似た品揃えです。どんな新刊が出ているのか、マーケティング調査で覗くだけです。衝動買いしたくなるような、素敵な並べ方がされていないからです。もっぱら古書店。そして、必要な新刊は、ネットでキーワード検索して、ピンポイント買いです。
買わなくなったのは本だけではありません。
服も買いません。ネットオークションで、ただ同然の値段でブランド物が手に入るからです。郵送料だけはかかりますが。
おそらくそれらと連動しているのでしょう、ネットでは買いづらい生鮮食料品も、ほとんど投げ売りのような値段でスーパーで売られています。家具も、安いです。デフレスパイラル。こんな値段では店員さんの人件費も出ないのではと心配になります。
でも、消費者としては、「安い」のはありがたい。でも、作り手として考えると、「この値段では、作る人の気概が削がれる」と心配になります。
その二律背反の真っ只中に私たちはいるような気がします。
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