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村松先生、こんにちは。質問をさせて頂いた者です。
「ネットと無料」について、反響がとても大きかったようで、私も驚いています。
村松先生のコメント、および他の方のご意見も拝読しました。
私もこの件に関しては、文化、経済はもちろんのこと、
「子育て」「教育」から端を発している部分も大きいと思います。
「親の本棚が、将来の子供の本棚」と考えるならば、
今の状況は必然かもしれません。
「本好きな子に育てたい」という知育ブームが本当に功を奏しているのなら、
今頃、日本は、本好き青年でいっぱいのはずですものね。
今も、「読み聞かせ知育教材」は大人気ですけど、
おかしな話だと思います。
ところで、「ネットと無料」について、私が一番シンボリックに感じるのは、
「まぐまぐ」の変遷です。
私も99年から始めたまあまあ古株ですし、
村松先生もその頃から「ホーリーマウンテン」などで活躍されてましたから、
よく記憶されていると思いますけれど、
「まぐまぐ」の辿った歴史を見ると、今の無料文化の行き着く果てを強く感じずにいません。
まだ創始者の速水さんが現役で頑張っておられた頃、
「まぐまぐ」には「読者数の表示」という機能がありませんでした。
数を表示すれば、部数の多いものだけに注目が集まってしまう。
部数の少ないものでも良いものはたくさんあるから、
読者さんが先入観なしにマガジン選びができるように、との配慮でした。
でも、「まぐまぐ」が注目を集め、発行者が爆発的に増えた頃から、
読者数が表示されるようになり、それに伴って、広告色が色濃くなりはじめました。
コツコツ頑張っていた小さいマガジンの発行者がヤル気を失い、
発行部数、購読数ともに加工するにつれ、広告の単価も下がり、
次に運営側が目を付けたのが、「発行者から広告費を取る」というシステムでした。
今は、ベラボーに高い広告費を払った発行者のマガジンが「おすすめ」として優先的に表示され、
お金を払わないマガジンは存在しないにも等しいような感じです。
まさに「金で買ったタイトル」ですよね。
ゆえに、個人がもっと読者を獲得しやすいブログに流れ、
その結果、ますます運営が苦しくなり、発行者の広告代に頼らざるを得なくなっている、
そういう印象があります。
これが本当に、創設時の「まぐまぐ」の描いていた未来図なのだろうか、と。
それなら、発行者から月額数百円の「発行料」を取って、
その代わり、誰でも公平にチャンスが与えられるシステムにすればよかったんじゃないか、
とも思います。
完全なボランティアでもない限り、「無料」で存続できるものなどあり得ないし、
制作者が、広告以外に、真っ当な報酬を回収できるシステムが確立されない限り、
破壊的な現象は歯止めが利かないように感じます。
私は、村松先生の「より単純に強いものを強くしただけ」という言葉が、
今の検索文化を物語っているように思いました。
確かに、Googleをはじめとする検索ツールは、
何億と存在するサイトから、必要な情報を瞬間的にはじき出し、
目の前にズラズラを並べてくれる。
一見、テクノロジーに基づいた、公平な結果に見えますけど、
ユーザーがやっていることは、
無意識的な「数の信奉」であり「弱者の切り捨て」です。
自分は確かな目で情報を選別しているように見えても、
100以下の結果は見ないとしたら、
それはやはり数において劣るものを切り捨てていることに他なりません。
結局のところ、力の作用によって「たえず目に触れる上位の情報」だけを相手に
考察しているのです。
となると、やはりネットにあるのは「強弱」であって、
強いものがより強くなるシステムに他ならないのですよね。今は。
でも、ミュージシャンの坂本龍一さんがこんなことを書いておられました。
坂本龍一さんに聞く ネット時代の音楽表現とは
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY200812180219.html
「ネットのおかげで、ぼくはたくさんの人に聞いてもらうことが音楽を作る動機にならないことが逆に分かった。アマチュア時代に戻ったような新鮮な感覚だ。顔の見えない、何をおもしろがるのか分からない大量のユーザーのために音楽を作る必要性を感じない。作りたい音楽があるからやっている。テクノロジーも100%は信用していない。結局はぼく自身の体にしかよりどころはない。自分の耳がどんなメロディーを聴きたいか。それを突き詰めていく」
そのフォロー記事
「君たちのためじゃないよ」〜ウェブ歴15年の創作活動(1/3)
http://allatanys.jp/B001/UGC020005120090121COK00214.html
も面白いです。
数への信奉がある一方、それがキッカケとなって、自分自身に立ち返る人もいる。
これは心強いことだと思います。
あちこちで溜息をつかなくても、もしかしたら、
おかしなシステムは自ずと滅ぶのかもしれません。
まだ「終わり」ではない、と、私は信じているのですが。。
長くなって、ごめんなさい。この話は本当に尽きないですね。。
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