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松×松 アブない?公開往復書簡

現代における彼方の不在   村松恒平


工作舎については、僕と松尾さんでは、知ってることも語り口も違いますが、認識は大筋で同じですね(笑)。

『THE HIGH SCHOOL LIFE』は、どこから出ていたのでしょう? すごい内容です。
というか、現在では、大学生でも理解できないくらいに、ある種、高度なのではないですか。
松岡正剛は、たぶん、自分自身のビジョンや熱意や才覚で、このそうそうたる著者たちを口説いていったのだろうと想像します。
ある種、一人の編集者、一人の物書きで終わるには、才能をもてあましていたのかもしれません。
初期の『遊』も面白かったはずですね。

しかし、寺山修司、唐十郎、土方巽、稲垣足穂……、濃いねー。
あの頃の人物の濃さ、とは何なのでしょう。他にも澁澤龍彦や三島由紀夫とか、この時代いるものねー。
彼方や、形而上への憧れ、という方向性も現代にはないものだ。
ファンタジーというものが、現代では、ゲームやアニメやマンガや映画ですっかり、カテゴリー化されてしまった。
ということは、ファンタジーが既存化したということです。
それらのメディアのコンピュータによる技術革新の最初のインパクトは凄かった。けれども、結果として、現在の既存のファンタジーに取り囲まれた現実というのもなかなか辛い気がする。
『ロード・オブ・ザ・リング』のような駄作なのか傑作なのかよくわからない,最先端技術の超大作を見ると、ぼうっと考えてしまう。

それとも、これが平和、というものか?



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